こんなお悩みに答えます。
こんにちは。家づくりを経験した「とある東北人」です。
マイホームを建てるにあたって、
・工務店が安いと言われる理由は?
・ハウスメーカーはなぜ高いの?
・ぼったくりで儲けすぎなのでは?
と気になる人も少なくないでしょう。
本記事では、そんな人に役立つ「ハウスメーカーと工務店の利益率や価格差」についてお伝えしたいと思います。
【ハウスメーカーvs工務店】利益率・価格差の比較
ハウスメーカーと工務店の「家1棟あたりの利益率」は上のグラフのとおりです。
このグラフを元に、
・1.売上原価
・2.売上総利益(粗利益)
・3.販売費・一般管理費
・4.営業利益
・5.価格差
について、1つずつ説明します。
※上記のグラフは、積水ハウスの決算情報(戸建て住宅事業)、TKC経営指標(木造建築工事業)、筆者が行った相見積もりのデータ、一級建築士へのインタビュー等を元に推定して作成したものです。
1.売上原価
売上原価は、材料費+工事費(職人の人件費など)であり、
・ハウスメーカー:74.6%
・工務店:72.5%
となっています。
つまり、家1棟の建築費用のうち7割以上が原価ということです。
工務店は、そのまま職人へ下請けに出すため、ほぼ純粋に「材料費+工事費」となります。
一方、ハウスメーカーは、まず工務店へ下請けに出して、その工務店が職人へ下請けに出すため、下請けの工務店の利益も工事費に含まれます。
2.売上総利益(粗利益)
売上総利益(粗利益)は、売上から売上原価を引いたものであり、
・ハウスメーカー:25.4%
・工務店:27.5%
となっています。
これは、家1棟の建築費用から原価(材料費+工事費)を引いたものに対応します。
しかし、これがそのまま業者の利益になるわけではありません。
ここから更に、広告費や営業マンの人件費などを引く必要があります。
3.販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、
・広告宣伝費
・販売促進費
・従業員給料
などのことであり、
・ハウスメーカー:14.0%
・工務店:23.8%
となっています。
具体的には、
・テレビCM、チラシの費用
・カタログ、パンフレットの費用
・自社ホームページの費用
・スーモなどの掲載費用
・モデルハウスの建築費、維持費
・来場特典、プレゼントの費用
・営業マンの給料
・その他社員の給料
・会社の家賃、光熱費
などが含まれます。
4.営業利益
営業利益は、売上総利益(粗利益)から販売費・一般管理費を引いたものであり、
・ハウスメーカー:11.4%
・工務店:3.7%
となっています。
これが、家1棟を売って最終的に残った利益です。
ハウスメーカーの営業利益は、家1棟の建築費用うち1割強ですが、工務店と比べると3倍以上あります。
5.価格差
ここまでは、ハウスメーカーと工務店の経費や利益を、どちらも合計100%に合わせて比較してきました。
しかし、同じような広さ・グレード・条件で相見積もりをすると、
・ハウスメーカー:3000万円
・工務店:2500万円
と、ハウスメーカーは工務店の1.2倍くらいの金額になる場合が多いです。
これを踏まえてグラフを修正すると、下記のようになります。
これが、家1棟にかかる実際の費用の内訳に近いと思われます。
【ハウスメーカーvs工務店】費用の種類ごとの比較
次に、ハウスメーカーと工務店の費用の種類ごとに、
・1.材料費
・2.工事費
・3.販売費
・4.その他
のそれぞれについて、比較して考えてみます。
1.材料費
材料費は、構造材、屋根外壁材、内装材、住宅設備などの費用です。
ハウスメーカーと工務店で比較すると、下記のとおりです。
▼ハウスメーカー
・住宅設備などはグレードが高め
・大量発注or大量生産→コスト減
・独自に研究開発、実験検証→コスト増
▼工務店
・材料のグレードはピンきり
・建材会社から仕入れている
・グレードを上げるとコスト増かも
ハウスメーカーは、大量発注や大量生産しているため、1棟あたりに必要な材料費をコストダウンできます。
しかし、独自に研究開発や実験、検証をしている場合もあるため、その分はコストアップします。
詳細は不明ですが、それらを合わせると、最終的にプラスマイナス・ゼロになるかもしれません。
一方、工務店の材料費の考え方は、業者ごとにバラバラです。
しかし、大半の業者は、低コストの材料を選ぶ傾向にあるため、ハウスメーカーと同程度のグレードに上げるとコストアップする可能性もあります。
2.工事費
工事費は、材料費を除いた、工事をする職人の人件費です。
ハウスメーカーと工務店で比較すると、下記のとおりです。
▼ハウスメーカー
・規格商品→材料や工程の共通化
・工場生産率、施工のマニュアル化率が高い
・着工棟数が多い→1棟あたりコスト減
・下請けの工務店の利益分→コスト増
▼工務店
・全てがオーダーメイド
・工場生産率、施工のマニュアル化率が低い
・着工棟数が少ない→1棟あたりコスト増
・下請けは職人のみ→コスト減
ハウスメーカーは、家の規格を決めることで材料や工程を統一したり、大半を工場で組み立てることで、現場の職人の腕によらない施工を行っています。
それに加えて、着工棟数も多いため、1棟あたりの工事費を抑えられるでしょう。
ただし、下請けの工務店の利益があるため、その分はコスト増です。
一方、多くの工務店は、家の規格がなく全てがオーダーメイドなため、ハウスメーカーのように効率的なシステムを作れません。
さらに、着工棟数も少ないため、1棟あたりの工事費が増えてしまいます。
ただし、下請けは職人のみなので、その分はコスト減となります。
3.販売費
販売費は、おもに広告費や営業マンの人件費です。
ハウスメーカーと工務店で比較すると、下記のとおりです。
▼ハウスメーカー
・テレビCMやチラシ:多い
・カタログ、パンフレット:豊富
・自社ホームページ:充実
・スーモなどの掲載:ある
・モデルハウス:住宅展示場に常設
・営業マン:各営業所に数名〜十数名
▼工務店
・テレビCMやチラシ:少ないorない
・カタログ、パンフレット:少ない
・自社ホームページ:いまいちorない
・スーモなどの掲載:ほぼない
・モデルハウス:ほぼない
・営業マン:社長+αの場合も
こうして見ると、ハウスメーカーの広告費や人件費が高いように思えます。
しかし、ハウスメーカーは着工棟数もかなり多いため、費用を棟数で割ると、1棟あたりの広告費などは工務店と同じくらいになります。
▼広告費の計算例
・ハウスメーカー:50億円÷1万棟=50万円/1棟あたり
・工務店:500万円÷10棟=50万円/1棟あたり
なので、よく「広告費が多いからハウスメーカーは高い」と言われますが、厳密には正しくありません。
安く思わせたい工務店側のポジショントークである場合がほとんどです。
4.その他
その他としては、
・営業以外の部署の人件費
・会社の家賃、光熱費、事務費用
・最終的に残る利益(営業利益)
です。
ハウスメーカーと工務店で比較すると、下記のとおりです。
▼ハウスメーカー
・営業以外の専門部署:ある→コスト増
・家賃、光熱費など:多い?
・営業利益:多い→経営が安定
▼工務店
・営業以外の専門部署:ある→コスト減
・家賃、光熱費など:少ない?
・営業利益:少ない→経営が不安定
ハウスメーカーは、営業以外にも、アフターサービスなど専門の部署やスタッフをかかえていることも多いため、その分コスト増です。
また、家賃や光熱費、事務費用は単純に比較できませんが、ハウスメーカーの営業所(モデルハウス)と工務店の事務所を比べると、ハウスメーカーの方が高い気がします。
ただし、ハウスメーカーは着工棟数が多いため、いずれの費用も1棟あたりで割ると大したことはないでしょう。
最終的に、全ての費用を引いて残る利益(営業利益)は、工務店よりも多くなり、安定した経営ができるようになります。
一方、工務店は営業利益が少ないため、経営が不安定となり、倒産するリスクのある業者も出てくるでしょう。